合奏譜頒布会 バックナンバー頒布
No.2318, ロンド 作曲 : R.カラーチェ
(1924年来日時の作曲者改訂による武井守成採譜版)
○出典 マンドリン・ギター研究, 1935.4/5/6
○原編成 第一、第二マンドリン、マンドラ、リュート、キタローネ、ギター
○スコア 第一、第二マンドリン、マンドラ、マンドロンチェロ、コントラバス、ギター
○パート譜 同上
作者は1863年12月イタリア、ナポリに生まれ、1934年11月同地に逝いた作曲家、楽器製作者、演奏家。弦楽器商を営むアントニオ・カラーチェの次男として生まれ、ナポリの王立音楽院を卒業後、兄のニコラと共に家業を受け継いだ。本頒布会読者には説明の必要もないと思われるのでその他の経歴はここでは省略する。作品は約170曲にも及び、現在Federazione Mandolinistica Italiana (F.M.I.)のWEBページにて現時点で判明している楽譜が全点公開されている。
1924年、カラーチェは三女のエレオノーラが当時在日イタリア大使通訳であったコルッチ氏と結婚する為に彼女を伴って来日し、2か月あまりの滞在にあわせて東京、京都、名古屋等で演奏会を開催した。更に皇太子時代の昭和天皇や東伏見宮邸などで御前演奏を披露、勲三等瑞宝章を叙せられ、現在も工房に掲げられている 。
本作はジュゼッペ・カンジャーノという人物に献呈されているが、おそらくナポリでカラーチェが主幹をつとめた音楽雑誌Musica Moderna等の印刷や出版物の装丁、宝飾等を手掛けていた人物と思われる。しかしそれを失念したカラーチェは本作を武井に献呈としてしまった。帰国後に気付いた「無邪気な(武井談)」カラーチェは別の曲を献呈してきたという逸話が残されている。本作の演奏は同年12月28日にカラーチェが旧O.S.T.を指揮した歓迎演奏会で演奏されているが、多くの逸話を持つこの日の演奏会とそれに至る様子を含め、カラーチェと多くの時間を共にした武井等の随想は「マンドリン・ギター研究」の1925年2月号に詳しい。また本曲は翌年1月31日の演奏会でも再演されており、正確な作曲時期は特定出来ないが「近い過去に書かれた」とされている事から1924年前半頃の作と推察される(旧O.S.T.に献呈された「エレジア」Op.131が1924年9月の作とされている)。
前述のF.M.I.のアーカイヴには原曲となったと思われるマンドリンとピアノの二重奏、マンドリンとギターの二重奏、四重奏、マンドリンオーケストラと4つのバージョンが残されているが、それぞれの版によって音量表記や強弱記号が異なっている。
今回頒布する合奏譜は上述のF.M.I.アーカイヴに収載されたものとはオーケストレーションが全く異なっており、前述の12月28日の演奏会に臨むにあたり、カラーチェ自身が「欠陥を持っている」として練習時にかなり手を加えたものとなっている。武井はこの修正について「成るべく実際に近いものを記して置きたい」として間近で見た修正を反映し、実演に使用した楽譜の再現を試みたと考えられる。
本楽譜はマンドリン・ギター研究の1935年4,5,6号に掲載され、同時に楽譜に書かれていないカラーチェの指示等の解釈を「詳解」としてまとめている。本頒布譜では「詳解」で文章として附された表記を極力楽譜上に反映してみたが、楽譜に表現できない点もあり、演奏にあたっては「詳解」を参照していただきたい。なお武井音楽文庫に残されている往事のパート譜(日付入り)の記載も参照している。また同譜ではリュートパートが書かれているが、今回は一般的な演奏で利用可能なようにマンドロンチェロパートにして部分的にオクターヴを変更してある。腕に自信のあるリュート奏者はぜひ武井が記したままで演奏してみてほしい。ローネと読めそうなパートは記譜通りだとコントラバスの音域である為バス譜にしてある。当日の写真を見るとマンドローネ以外にキタローネとアルチキタルラが並んで写っている事からバス譜として演奏したと思われる。またギターは部分的にD調弦が示唆されている。
なおカラーチェの来日時の動画はYoutubeで公開されており、気さくな人柄を伺わせているが、武井がにこやかに談笑している姿も極めて印象的である。
No.2222, ガヴォット「愛撫」 作曲 : G.カーリ
○出典 Il Plettro, Anno7-8/9, 1912.04.30/05.15
○原編成 第一、第二マンドリン、マンドラ、ギター
○スコア 第一、第二マンドリン、マンドラ、ギター、マンドロンチェロ、マンドローネ
○パート譜 同上
作者については本作入賞が発表された”Il Plettro”誌に、マンドリン演奏の世界では新たな存在だが、楽壇では既に高い評価を受けていると紹介されており、多くの楽団の指揮者として活躍する一方、ピアノと吹奏楽の為の曲を多く生み出しているとある。作品には4楽章の交響曲や、2幕の歌劇「エーデルワイス」等があり、作品はイタリア各地のコンクールに入賞しているとされる。”Il Plettro”誌では1916年、1917年にも作者の作品が掲載されているが、各種の音楽事典やイタリアの様々な文化や人々のライブラリである”Treccani.it”にも掲載されていない。
本作は”Il Plettro”誌の第4回国際作曲コンクールのカテゴリーD、四重奏(マンドリン×2、マンドラ、ギター)の為のガヴォット、前奏曲、ミヌエット等の部門で一等を受賞した作品である。”Il Plettro”誌の作曲コンクールからは多数の名作が生み出されており、この第4回でもS.ファルボの序曲ニ短調やA.カッペルレッティの「劇的序曲」、N.ラウダスの「ギリシャ風主題による序楽」などが入賞しており、それらに匹敵する作品と位置づけられるだろう。
出典 Il Plettro, Anno7-8/9, 1912.04.30/05.15
原編成 第一、第二マンドリン、マンドラ、ギター
スコア 第一、第二マンドリン、マンドラ、ギター、マンドロンチェロ、マンドローネ
パート譜 同上
作者については本作入賞が発表された”Il Plettro”誌に、マンドリン演奏の世界では新たな存在だが、楽壇では既に高い評価を受けていると紹介されており、多くの楽団の指揮者として活躍する一方、ピアノと吹奏楽の為の曲を多く生み出しているとある。作品には4楽章の交響曲や、2幕の歌劇「エーデルワイス」等があり、作品はイタリア各地のコンクールに入賞しているとされる。”Il Plettro”誌では1916年、1917年にも作者の作品が掲載されているが、各種の音楽事典やイタリアの様々な文化や人々のライブラリである”Treccani.it”にも掲載されていない。
本作は”Il Plettro”誌の第4回国際作曲コンクールのカテゴリーD、四重奏(マンドリン×2、マンドラ、ギター)の為のガヴォット、前奏曲、ミヌエット等の部門で一等を受賞した作品である。”Il Plettro”誌の作曲コンクールからは多数の名作が生み出されており、この第4回でもS.ファルボの序曲ニ短調やA.カッペルレッティの「劇的序曲」、N.ラウダスの「ギリシャ風主題による序楽」などが入賞しており、それらに匹敵する作品と位置づけられるだろう。
No.2306, 歌劇「ゴリアルド家の人々」第3幕への前奏曲
作曲 : E.カッサーニ 編曲 A.カンパニーニ
○出典 Il Plettro, Anno18-07/08, 1924
○原編成 第一、第二マンドリン、マンドラ、ギター、マンドロンチェロ
○スコア 第一、第二マンドリン、マンドラ、ギター、マンドロンチェロ、マンドローネ
○パート譜 同上
作者は1863年3月イタリアのパルマに生まれ、1936年9月同地に逝いたクラリネット奏者、作曲家、指揮者。1879年にパルマ王立音楽院に寄宿生として入学し、89年に首席で卒業、翌年にはクラリネット奏者として全国コンクールで優勝し同音楽院で1935年まで教鞭をとった。独奏者として活躍する一方、地元のサン・ジョヴァンニ劇場で歌劇指揮者としても活躍した。作曲家としての創作は舞台ものが多く、歌劇やオペレッタの他、本作のようにヴォードヴィルと呼ばれる舞台劇(フランス発祥の流行歌入り軽喜劇)等を残している。
本作はルイジ・シベリーニの台本による3幕の舞台劇で、パルマのテアトロ・レージョで1893年3月に上演された作品でパルマの大学が共同で主催する芸術協会の為に書かれている。どのような筋書きの内容かは判然としていないが、本作だけがマンドリン合奏に編曲されている。時代的にいわゆるヴェリズモオペラに属するものと思われるが、起伏に富んだ作品で和声が美しい作品である。中規模な編成での演奏が効果的ではないかと思われる。
日本では近年演奏されたという話を聞かないが、早くも1927年に慶応義塾マンドリンクラブであの宮田政夫が指揮をして取り上げており、慧眼の至りというべきだろう。ちなみに1937年には服部正が指揮をして再演されている。
編曲のA.Campaniniはアッティリオ・カンパニーニの事と推察される。
A.カンパニーニは1863年、カッサーニと同じパルマに生まれ、1938年に同地に逝いたヴィオラ奏者、作曲家、指揮者。第一次大戦後、ジォヴァンニ・ボッテジーニの名を冠したマンドリン合奏団の指導者指揮者に就任した。作曲家としての作品は1913年にIl Plettro誌の第4回作曲コンクールにおいて第3位を受賞した「セレナータ(未発見)」の他1曲しか知られていないが、編曲の面では度々コンクールの編曲部門で受賞している。コンクールで受賞している著名な編曲作品としてL.V.ベートーヴェンの「アテネの廃墟」序曲、F.メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、J.ブルグマイン(G.リコルディ)の「婆さんの話」、P.モルラッキの「スイスの牧人」の他、本邦にはもたらされていないものとして、L.マンチネルリの「クレオパトラの悲劇の為の6つの交響的間奏」序曲がある。